夏のはじまり、ユリの花があちこちに咲く季節です。
自然に育つユリなんだろうな。
なんか、村の中も30メートルとか50メートルとかおきにポツポツ咲いていたりするから、その昔、今はなき家の人が植えたりしたのだろうか。でも、誰もいない山の中にもぽつんぽつんと咲いてたりもする。
そんなわけで、集落の中や田んぼに行く道も、全体がいつもいいユリの香りに包まれている今日この頃、いい季節です。

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いい香りといえば、またもう少し経つと、稲穂が出始めて、田んぼ周りがふんわり穂の香に包まれます。夕方涼しくなる時間帯に田んぼで一人、稲を眺めながら香りを楽しむのが好き。
いい香りといえば、田の泥の匂い。仕事あと、シャワーを浴びたあとにでも、なぜか手に残っていたりすると、手のひらを鼻にあてて、人知れずほっこりしたりしています。
いい香りといえば、草刈りの匂い。刈る草によって、香ばしいもの、爽やかなもの、キツいもの、バニラみたいな香りがするもの。
これも、早朝や夕方の風にのって漂う刈り草の香りはいいものです。
いい香りといえば、刈った草が田に落ちて腐って発酵、分解されてる匂い。
でもちょっと有機的な、言えばクサい匂いなのかなぁ。
泥の匂いもまた、子どもたちは田植えを終えたあとなどに、服に泥の匂いがついちゃった~などとイヤな顔をします。彼らにとってはよい匂いではないみたい・・。
でもね、思うようになったのは、腐ってるような発酵しているような匂いって、田んぼの中の微生物や菌がしっかり働いてくれている証拠なんだろうな、もっとがんばれよって。
田んぼの泥も自分にとっては同志のような大切な存在。だからへんな匂いかもしれないけど、うれしい匂いです。
いい香りってなんだろうね。
シャンプーとか香水とか、それは人が好むように研究されて作られたものだから、いい香りなんだろうけど、
なんか僕がうれしいのは、人間のために作られた匂いというよりも、暮らしや営みの中にあるにおい、自然が生きてる、がんばってるにおい、なのかな。
穂の香に包まれるのは一年の中でもほんの一時期。稲穂の誕生の香りを楽しみたいと思います。
わたなべまさゆき(2024年7月)
