2018年末に亡くなられた隣の集落のおじいちゃんがずっと大切にしてきた名平山の棚田です。
水稲の専業農家として数十年も働いてきたおじいちゃんでしたが、八十歳近くになって身体も弱まったため、これまで担っていたたくさんの田んぼを、ここ数年間で段階的に手放してきていました。
名平山の田んぼは、そのおじいちゃんが亡くなる直前まで他人には任せずに自分でつくり続けてきた田んぼです。
「あの田っぽの米はうめぇすけなぁ」
お米は、品種や産地が同じならばだいたい同じ味わいかと思っていましたが、実はそうではないようです。
山一つ越えれば土が変わり、標高が変わり、水が変わり、陽当りが変わり、それらによって味がずいぶん変わるとのこと。
だから、幾つもの山に田んぼを持っていたおじいちゃんは、この“うめぇ米”が穫れる田んぼを最期まで手元に残したのだそうです。
「渡辺さん、あとはみんな任せるよ」
亡くなる直前、ありがたくも僕にそう言ってくださいました。
粘土質の割合が強いからこそ味も良いのか、、
しかし正直なところ、作業もいっそう大変です。
でも、おじいちゃんが大切にしてきたこの田んぼを、遺志を引続ぐつもりで、心を込めてつくっています。