野良着、ファッション?

僕の田んぼ仕事のときの作業着=野良着は、もちろんですが、街に出かけるような服装ではありません。

多くは、
・自分が着古したジーンズ、Tシャツ、ポロシャツ
・隣村のおばあちゃんが作ってくれた山モモヒキ
・廃棄するからと言っていただいてきたなんかのイベントロゴとかが入ったシャツ

みたいなものです。

おばあちゃんが作ってくれた山モモヒキは、昔ながらの作りで、今のズボンとはまるで仕組みが異なる。薄くて強い生地一枚、紐一本だけで作ってあって、それでも腰のところでギュッと絞れば落ちてくることがありません。藍色なので日本版のデニムみたいな感じ。
現代の仕様に合わせて、母親にスマホを入れるポケットだけ付け加えてもらいました。

着古したのジーンズはくたびれたり色あせたりしたもの。厚手なので主に気温が低い春先とか秋とかの作業に着ますが、履きつぶしてもまたを継ぎはぎし、当て布で穴や裂けを直しながら、もう10年〜15年も履いてるのが数着。ファストファッション(fast fashion)が、“スロウ”(slow)ファッションになっています。色落ちして泥の色味もついた農家のダメージジーンズ、かっこいいでしょ?(ほんとか・・!?)

シャツも、ながーく着ているから穴が空いたり、極端にうすくなったりしちゃってるし、リサイクルショップとかで買った古着の300円とか500円とかのジャージズボンも履いたりしてます。

こないだ村の集まりの時に、何気なくそんな服たちを身にまとい出向いたら、「おい!みじょげ(かわいそう)だなぁ。新しいの買ってもらえよ」なんて笑われました。

そうだよなぁ。世の若手農家さんたちは、最近流行りのオシャレな機能性ワーク着や、冷却ファンが入ってる作業着なんかをカッコよく着こなしてるものなぁ。

いやでも、ちがうんです!

・穴が空いたり、薄くなってるからこそTシャツは涼しい。
・中古で300円だって、まだまだ全然着れるからお得感もうれしい。
・昔の知恵が集結した山モモヒキは涼しいし履きやすいし。
・貧困国生産で搾取とも言われる大量消費大量生産・使い捨て的なファストファッションはよくない

つまり、買えないんじゃなくて、これが好き、ということ。

ある人は、昔のお米づくりを再現したいという趣向で、農法はともかく、作業着までわざわざ希少な昔の野良着を高いお金で買って、それを着て作業している人もいたりしますが、いくら大事に直し直しでも、それはちょっと違う気がする。

物を大事に長くつかう気持ちよさ、身につけていくことで馴染み最適化される物のよさ、昔の知恵が織りなす着物の良さ、そういったものの着心地は機能性がなす着心地とはまた別の次元です。

汗まみれ・泥だらけになったら、庭のタライでバシャバシャと下洗いして、外用の洗濯機に投げ込んで、晴れの日にロープに吊るす。

こんな服たちを、オシャレも何もなく、普段も街中ファッションとしてどこへでも来ていけたらなぁ、なんて思うのだけれど。。それはさすがに・・、かなぁ。

衣食住の「衣」。その本質ってなんだろう?

わたなべまさゆき(2023年7月)



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